こんにちは。防災の専門家の石川です。停電はあなたが思うより、はるかに長く続きます。スマホの充電だけを想像していると、必ず後悔します。
この記事は、災害現場を見てきた立場から「本当に家庭に置くべき一台」を、公的データと具体的な使い方で解説します。スペックの寄せ集めではなく、家族構成と災害想定から逆算して選べる構成にしました。読み終える頃には、迷いなくカートに入れられる状態になります。
- ✓ 停電が実際どれくらい続くのか、公的データで分かる
- ✓ 自分の家に必要なWh(容量)を自分で計算できる
- ✓ 大容量・軽量・ソーラー対応から失敗しない選び方が分かる
- ✓ 今日・今週・今月やるべき行動が明確になる

停電は「数時間」では終わらない現実
まず知ってほしい数字があります。経済産業省と各電力会社の発表によれば、2018年の北海道胆振東部地震では道内ほぼ全域約295万戸がブラックアウトし、完全復旧まで約45時間を要しました。単純な「一晩」では済んでいません。
さらに深刻なのが長期停電です。2019年の台風15号(房総半島台風)では千葉県内の一部で最長21日間停電が継続。2024年の能登半島地震では発災から2週間経過時点でも一部地域で停電が残りました。「防災用に一日分」という発想では、命綱にならないのです。

| 災害名 | 最大停電戸数 | 復旧までの期間 |
|---|---|---|
| 北海道胆振東部地震(2018) | 約295万戸 | 約45時間で概ね復旧 |
| 台風15号 千葉(2019) | 約93万戸 | 一部で最長21日 |
| 台風19号 東日本(2019) | 約52万戸 | 広域で3〜7日 |
| 能登半島地震(2024) | 約4万戸 | 2週間後も一部未復旧 |
結論として、家庭で用意すべきポータブル電源は「最低3日、できれば1週間、家族の必要最低限の電力をまかなえる容量」です。この後、その容量を自分で計算できるようにします。
あなたの家に必要な容量(Wh)を自分で計算する
ポータブル電源の容量は「Wh(ワットアワー)」で表記されます。計算式はシンプルで、消費電力(W)× 使用時間(h)= 必要Whです。まずは1日に本当に必要な機器だけを絞り込みます。
ここで大事なのが「公称容量の全量は使えない」という原理です。インバーターの変換ロスやバッテリー保護のため、実際に取り出せるのは公称値の約80〜85%と考えて設計します。1000Wh表記なら実質800Wh前後が目安です。
| 機器 | 消費電力の目安 | 1日の使用時間 | 1日の必要Wh |
|---|---|---|---|
| スマホ充電(1台) | 約10W | 2時間 | 約20Wh |
| LED照明 | 約8W | 5時間 | 約40Wh |
| ノートPC | 約45W | 3時間 | 約135Wh |
| 扇風機(DC) | 約30W | 6時間 | 約180Wh |
| 冷蔵庫(小型) | 約100W(平均40W) | 24時間 | 約400〜700Wh |
| 電気毛布(弱) | 約40W | 8時間 | 約320Wh |
| CPAP(医療機器) | 約30〜60W | 8時間 | 約240〜480Wh |
逆に、一人暮らしでスマホと照明とラジオだけなら1日100Wh未満で足ります。この場合、250〜300Whクラスの軽量モデルで十分実用になります。「大は小を兼ねる」で全員が1000Whを買う必要はありません。
ポータブル電源の選び方 6つの基準

スペック表を眺めても選べません。防災用途で私が必ず確認するのは次の6点です。順に説明します。
基準1 バッテリーの種類(リン酸鉄リチウムを選ぶ)
防災用はリン酸鉄リチウム(LiFePO4)一択です。三元系リチウムよりサイクル寿命が長く、3000回以上の充放電(約10年使用相当)に耐えます。熱安定性も高く、押入れ保管や車載での事故リスクが低い。数千円の差でも、命を預ける機器はここでケチらないでください。
基準2 定格出力(W)は消費電力の合計を上回るか
容量(Wh)ばかり見て、出力(W)を忘れる人が非常に多い。電子レンジは1000W以上、ドライヤーは1200W、電気ケトルは1000〜1300W必要です。定格600Wの機種では動かせません。家電を使いたいなら定格1500W以上、最低でも1000Wは欲しいところです。
基準3 ソーラーパネル入力に対応しているか
長期停電で命綱になるのがソーラー充電です。対応入力W数(例、200W入力対応)を必ず確認してください。入力容量が大きい機種ほど、短時間で満充電に戻せます。100W入力しか受けない機種にいくら大きなパネルを繋いでも意味がありません。
基準4 パススルー充電とUPS機能
コンセントに繋いだまま出力もできる「パススルー」、停電した瞬間に切れ目なく電源を供給し続ける「UPS機能(切替時間20ms前後)」があると、冷蔵庫や医療機器を安全に守れます。特にCPAPユーザーはUPS対応機種を必ず選ぶこと。
基準5 重量とサイズ(女性・高齢者でも動かせるか)
1000Whクラスは10〜13kgあります。米袋一つ分です。避難所へ持ち出すのは非現実的で、「在宅避難用」と割り切るのが正解。持ち出し用は別に3〜5kgの小型モデルを用意する二段構えが理想です。
基準6 PSE認証と保証年数
日本国内で販売する電気製品には電気用品安全法(PSE)の適合が必須です。無名メーカーの並行輸入品はここで引っかかります。加えてメーカー保証3〜5年があるかを確認してください。長期使う機器なので、サポート窓口が日本語で機能することも重要です。
- ✓ バッテリーはリン酸鉄リチウム(LiFePO4)か
- ✓ 定格出力は使いたい家電をカバーするか
- ✓ ソーラー入力に対応し、入力Wは十分か
- ✓ UPS機能があるか(医療機器・冷蔵庫用途)
- ✓ 重量は運用場所に合っているか
- ✓ PSE適合&日本語サポート&長期保証
容量帯別・比較でわかる違い
ポータブル電源は容量帯によって「できること」が別物になります。3つのレンジで整理します。
| 容量帯 | 重量目安 | 価格帯 | できること |
|---|---|---|---|
| 200〜300Wh(小型) | 3〜5kg | 約2〜4万円 | スマホ20〜30回、LED照明数日、車中泊1泊 |
| 500〜700Wh(中型) | 6〜8kg | 約5〜8万円 | ノートPCとルーター終日、扇風機、小型冷蔵庫短時間 |
| 1000〜1500Wh(大容量) | 10〜15kg | 約9〜15万円 | 冷蔵庫24時間、電子レンジ、家族で3日凌ぐ |
結論を先に言うと、在宅避難を前提とするなら1000Whクラス、避難所持ち出し用なら300Whクラス。予算があれば両方持つのが最強です。中途半端に500Whを選ぶと「家電は動くけど時間が持たない」で後悔します。
ポータブル電源のメリットとデメリット

買う前に、良い面と割り切るべき面を正直に整理します。
メリット(防災視点)
最大の利点は「静音でクリーン」な点です。ガソリン発電機と違い、屋内で使え、排気ガスがなく、集合住宅でも扱えます。夜間も稼働音でトラブルになりません。さらにキャンプ・車中泊など平時利用ができるため、「使わずに劣化させる備え」になりにくいのも大きな価値です。
デメリット(正直に)
まず冷房(エアコン)は基本的に無理。エアコンは起動時2000W以上を要求するモデルが多く、家庭用ポータブル電源では動かせても短時間です。夏は扇風機と保冷剤で乗り切る前提を持ってください。また、10kgを超える機種は災害時に持って階段を降りるのは危険です。「動かさない備え」と割り切ります。
防災の専門家が厳選 用途別おすすめポータブル電源5選
市場には数百モデルありますが、防災用途で自信を持って推せるのは実質この5モデルです。価格帯を低・中・高で分散し、メーカーも分けて選びました。
第1位 Jackery ポータブル電源 1000 New
Jackeryポータブル電源1000 Newは容量1070Wh・定格1500Wという4人家族の在宅避難3日分を単独でまかなえる大容量モデル。重量約10.8kgと同クラスでは軽量寄りで、UPS機能とアプリ管理にも対応します。台風接近前に満充電しておき、停電と同時に冷蔵庫を差し込む運用に最適。日本語サポートが手厚いのも安心材料です。
第2位 Anker Solix C1000 Gen 2
Anker Solix C1000 Gen 2は容量1024Wh・定格1500W。リン酸鉄リチウム採用で3000回以上の充放電サイクルに耐え、10年使えるコスパの高さが魅力。ACコンセントからの急速充電が速く、台風予報を見てから半日で満タンに戻せます。子育て世帯・共働き世帯のように「準備の時間が取れない家庭」に強く推せます。
第3位 Anker Solix C1000 Portable Power Station

Anker Solix C1000は1056Wh・1500W出力の実力派。UPS切替速度が速く、CPAPなど医療機器を使う家庭に向きます。停電時に一瞬も切らせたくない機器がある方は、この機能を最優先で選んでください。重量約12.9kgとやや重いため、設置場所を固定して運用する前提で。
第4位 BLUETTI EB3A ポータブル電源(軽量・持ち出し用)
BLUETTI EB3Aは容量268Wh・定格600W・重量約4.6kgと女性でも片手で運べる軽量モデル。避難所への持ち出し、車中泊、ベランダ避難など「動かす前提」の運用に向きます。スマホなら20回以上充電でき、LEDランタンとルーターを併用して2〜3日耐えられます。大容量機との二段構えで持つのが理想です。
第5位 EcoFlow RIVER 3(低予算・入門)
EcoFlow RIVER 3は245Wh・300W出力・重量約3.5kgの小型入門機。「まずは何か一台」という一人暮らし・学生・単身赴任の初手として最適です。スマホ・ノートPC・LED照明を数日運用でき、価格は約2万円台。ここから始めて、余裕ができたら大容量機を追加する段階的な備えが賢いです。
組み合わせ推奨 ソーラーパネルで長期停電に備える
3日を超える停電では、ソーラーパネルの有無で生死が分かれます。本体一体型の小型ソーラーは晴天でも満充電に何日もかかるのが実情で、頼りになりません。100W以上の折りたたみパネルを本体と同じメーカーで揃えるのが正解です。

BLUETTI PV200は200W出力・変換効率23.4%・折りたたみ式。晴天下で1000Wh級を約5〜7時間で満充電できる実力があり、大容量機の相棒として理想的です。折りたたむとスーツケース程度に収まり、収納にも困りません。

Jackery SolarSaga 100WはJackery本体と同メーカーで揃えたい方向け。100W・変換効率24%・重量約4.7kgで、ベランダに立てかけて使えます。中容量機と組み合わせるなら100Wクラスが扱いやすいバランスです。
停電を生き延びる運用術

買っただけでは備えになりません。運用の知恵を4つ紹介します。
保管は「常時50〜80%充電」で放置しない
リチウム系バッテリーは満充電放置でも空放置でも劣化します。3ヶ月に1回は残量を確認し、50〜80%を維持。台風シーズン前(6月)と冬前(11月)は満充電に戻して次に備えます。
使用優先順位を家族で決めておく
停電時に何を最優先で繋ぐか、家族で合意しておきます。情報(スマホ・ラジオ)>冷蔵庫>照明>夏なら扇風機/冬なら電気毛布が基本の序列。電子レンジやドライヤーは「使わない」と決めておくと容量が持ちます。
ソーラー充電は「昼間だけ」を原則にする
晴天の日中にパネルで満充電に戻し、夜間の消費に備えるサイクルを作ります。曇天では公称値の30%以下しか発電しないので、曇りの日は節電モードに切り替える判断が必要です。
普段使いで劣化を防ぐ
キャンプ、車中泊、ベランダでのDIY作業などで月1回は稼働させると、バッテリーの状態が保たれます。「非常用にしまい込む」のは最悪の運用です。
家族構成別 世帯別の選び方
あなたに最適な一台は、家族構成でほぼ決まります。
| 世帯タイプ | 推奨容量 | 推奨モデル例 |
|---|---|---|
| 一人暮らし(学生・単身) | 250〜300Wh | EcoFlow RIVER 3/BLUETTI EB3A |
| 夫婦2人暮らし | 500〜1000Wh | BLUETTI EB3A+大容量機 |
| 子育て世帯(3〜4人) | 1000Wh以上+ソーラー | Jackery 1000 New+SolarSaga 100W |
| 高齢者世帯 | 1000Wh+UPS機能 | Anker Solix C1000 |
| 医療機器利用世帯 | 1000Wh以上+UPS必須 | Anker Solix C1000+ソーラー |
一人暮らし
スマホ・照明・ノートPCが動けば十分。重量3〜5kgの持ち出せるサイズを選び、避難所生活にも対応します。EcoFlow RIVER 3かBLUETTI EB3Aで2万円台から備えられます。
子育て世帯
ミルク作り、離乳食の温め、子どものスマホ学習、夏の扇風機など消費電力が跳ね上がるのが子育て世帯です。1000Wh級+ソーラーの二段構えを強く推奨します。
高齢者・医療機器世帯
CPAP、在宅酸素、電動ベッドなど停電で命に関わる機器がある家庭はUPS機能付き一択。停電の瞬間に電源が切れないため、寝ている間の停電も安心です。
よくある失敗と対策
実際の相談で頻繁に出会う「買った後の後悔」を5つ紹介します。
失敗1 容量だけ見て出力を見なかった
「大容量1000Whなのに電子レンジが動かない」という相談が多い。定格出力(W)が使いたい家電のワット数を超えていないと動きません。買う前に、使いたい家電のワット数を全部書き出してください。
失敗2 押入れにしまい込んで放電
1年放置すると自然放電でゼロになり、深放電で寿命が縮みます。3ヶ月に1回の充電確認をカレンダーに登録してください。
失敗3 ソーラーパネルを買わなかった
本体だけあっても、使い切ったら停電中は再充電できません。100W以上のパネル併用で「使い続けられる備え」に変わります。
失敗4 無名メーカーの激安品を買った
PSE非適合品や、公称容量を大幅に下回る粗悪品が混ざっています。Jackery・Anker・EcoFlow・BLUETTIなど大手メーカーを選び、日本語サポートがある製品にしてください。
失敗5 使い方を災害時に初めて確認する
停電の暗闇で説明書は読めません。購入したら必ず1回、家族全員で使い方を練習する。子どもでも電源スイッチとコンセントの位置が分かるようにしておきます。
FAQ よくある質問
このセクションではポータブル電源 防災 おすすめについて、要点をやさしく解説します。
防災用におすすめのポータブル電源はどれですか?
4人家族の在宅避難を想定するならJackery ポータブル電源 1000 Newが第一候補です。容量1070Wh・定格1500W・重量約10.8kgで、冷蔵庫と照明とスマホ充電を数日カバーできます。日本語サポートと長期保証があり、迷ったらこれで失敗しません。
ポータブル電源でエアコンは動きますか?
基本的に現実的ではありません。エアコンは起動時に2000W以上を要求する機種が多く、1500W定格の家庭用ポータブル電源では起動できないか、動いても1〜2時間で電池が尽きます。夏は扇風機と保冷剤、冬は電気毛布と重ね着で乗り切る前提を持ってください。
寿命はどれくらいですか?
リン酸鉄リチウム採用モデルなら公称3000回以上の充放電サイクルに耐え、実使用で約10年が目安です。三元系リチウムは500〜1000回程度なので、防災用は必ずリン酸鉄タイプを選んでください。長く使うほど1回あたりのコストは下がります。
飛行機に持ち込めますか?
航空法により、100Wh超のリチウム電池は原則機内持ち込みも預け入れも不可です。ポータブル電源はほぼ全モデルが100Whを大きく超えるため、飛行機での移動には使えません。車での移動や自宅設置が前提の機器です。
ソーラーパネルは何ワットのものを選べばいいですか?
1000Whクラスの本体には200W前後のパネルが最も効率的です。晴天で5〜7時間で満充電に戻せます。中容量機(500Wh)には100Wパネル、小型機(300Wh以下)にはUSB出力できる40W前後のミニパネルが扱いやすいです。本体と同じメーカーで揃えるのが鉄則です。
マンションでも使えますか?
もちろん使えます。ガソリン発電機と違い排気ガスや騒音がないため、集合住宅でこそ真価を発揮します。ベランダにソーラーパネルを立てかけて充電するのも問題ありません。管理規約で共用部使用が制限される場合のみ、専有部(ベランダ)内で運用してください。
まとめ 今日・今週・今月やること
ポータブル電源は「持っているだけで安心」ではなく、選び方・容量・運用の3つが揃って初めて命綱になります。最後に、この記事を閉じたあとの行動を段階的に整理します。
- ✓ 今日やること 家の主要家電のワット数を書き出し、必要Whを計算する
- ✓ 今日やること 家族の使用優先順位(情報→冷蔵→照明→冷暖房)を合意する
- ✓ 今週やること 予算と世帯タイプに合ったモデルを1台注文する
- ✓ 今週やること 届いたら開封し、家族全員で電源投入と接続を練習する
- ✓ 今月やること 100W以上のソーラーパネルを追加購入する
- ✓ 今月やること 3ヶ月ごとの充電確認をカレンダーに登録する
防災は「いつか」ではなく「今日」から始めるものです。この記事があなたと家族の停電対策の第一歩になれば、防災の専門家として何より嬉しく思います。
